親が子供に「さよなら」を贈る…いきものがかり水野良樹×横山だいすけ



同作の主題歌「さよならだよ、ミスター」の作詞・作曲を手がけたのは、
人気バンドで現在“放牧中”のいきものがかりの水野良樹。

そして歌の担当は、NHK子供番組「おかあさんといっしょ」で
おなじみの元うたのおにいさんこと横山だいすけ。

水野は現在、個人活動としてさまざまなアーティストに楽曲を提供しており、
横山も歴代最長の9年間をつとめた11代目うたのおにいさんを、
この3月に卒業したばかり。

そんな注目のふたりがタッグを組む本作。

曲に込めたそれぞれの「意外な」想いを語ってくれた。




☆自立というテーマから生まれた「ミスター」の意味


ーー最初にこの曲を聴いたときの印象はどうでしたか?

横山だいすけ(以下、横山)親と子供のつながりや、親から子供へのメッセージが随所に散りばめられていて、とにかく「あたたかさ」を深く感じました。

水野良樹(以下、水野)親世代の人たちが子供たちにエールを送れるような曲になればいいなと思って書いたんです。ちょっと切ない歌詞になっているので、そのときに横山さんの明るい声がフィットするんじゃないかと。その明るさや華やかさが残るような声を意識して曲を作っていきましたね。

横山 でも、実は初めて歌詞を読んだときに違和感もあったんです。なんで子供向け映画の歌なのに、題名に「ミスター」や「さよなら」が入っているのかなって。

水野 そうですよね(笑)。この言葉は、単純に子供扱いして「守ってあげる」とかではなくて、まだ小さいけれどもちゃんと一人の人として認めたうえで、「自分の足で歩いていくんだよ」って優しく送り出してあげたいという想いを込めています。

横山 それは僕の中ですごく腑に落ちたというか、子供扱いしすぎないところにとても共感したんです。以前「おかあさんといっしょ」で、大事なセリフでちょっと難しい表現を使うことがありました。もっと簡単にしたほうがいいのでは、と演出家の方と話をしたら、「言葉の意味がわかるかわからないかは問題じゃない、どれだけ僕たちが言葉の意味を感じて伝えるかが大事なんだ」と言われたんです。今はわからなくても、いつか必ず伝わるからって。それって今回の曲にも当てはまるところがありますよね。「ミスター」や「さよなら」に込められた意味を聞いたときにハッとしたんです。

水野おっしゃるように、「いつか伝わるときが来る」というのは今回のテーマでもあって。20年くらい経ってその子が親になったときに、初めて「あ、そういうことだったのか」って感じてくれたらいいなと思っています。

横山 それは今年生まれたお子さんに対しても意識されているんですか?

水野 どうなんでしょう。とにかく溺愛しちゃってますけど(笑)。
これまで、自分の人生の先のことなんて、息子が生まれるまであまり考えたことがなかったんです。でも、今は自分が死んだ後の“彼の人生”を想像するようになりました。彼にとって何が一番幸せなのかを考えたら、「自分で幸せになる力」を作ることなんじゃないかって。

横山 そうですね。

水野 これから息子は、僕の知らないところでさまざまな経験をしていくだろうし、親はすべてを与えることはできない。であれば、自立させる手助けをしてあげたい。

横山 子供たちはいつか自立していかなければいけないですもんね。嬉しいことも悲しいことも、これからの人生いろんなことがあるけど、自分の足で歩いていってほしい。僕も、そんな親の想いを自分の中で上手く表現できたらという気持ちで歌いました。

水野 横山さんは、うたのおにいさんという立場から、子供たちにとって楽しい存在というだけではなく、親御さんたちからしたら、横山さんの歌声や明るさに助けられてきたのではないかなと思うんです。今回の歌のメッセージととても近いところに居続けている方だから、単純に声が合うだけではなくて、横山さんの存在とか人間性そのものが、この曲にぴったりだと思いましたし、だからこそ想像以上の曲になったと感じています。


☆作り手と歌い手、今までとは違う仕事への取り組み方

ーー水野さんはいつもどんなスタンスで曲を作られていますか?

水野 なるべく独りよがりな歌にならないように心がけていますね。そういった意味では、誰もが主人公になれるような「余白」を残した曲を作るように意識しています。

横山 何かを参考にすることはあるんですか?

水野 特に意識はしてないですが、映像をイメージすることは多いかもしれません。まだできてもいない架空のミュージックビデオを頭の中で思い描いたりとか。

横山 わかります。僕も、いつも自分の歌う景色を、聴いている人に届けたいという気持ちで歌っています。なので、まずは自分で思い描いてみるところから表現が広がっていくような気がしますね。ちなみに今回は、お子さんのお顔も思い浮かびましたか?

水野 直接的にはないんですけど、この前息子を膝の上に乗せたときに、目の前にある小さな背中見て、なんか急にグッと込み上げてきたんです。たぶん、これから立ち上がって、どんどん成長していくんだろうなって。そのときの映像や感情が、もしかしたら詞やメロディーにつながっているのかもしれないです。

横山 「こぼれおちる涙には、きみしか知らない理由があるのだろう。言わなくていい。振りかえるなよ、その背中はもう美しい~♪」ですね。

水野さんは、「曲に自分の経験や想いをあまり乗せない」とおっしゃっていたのをどこかの記事で拝見したことがあるのですが、そういった意味では今までとは少し違うアプローチをされたのでしょうか。

水野 そうですね。基本スタンスとしてはこれまでと変わらないようにはしているんです。ただ、今回たまたま僕が息子を授かったときにこのお話をいただいたり、親子というものにとても近い存在の横山さんが歌ってくれたりと、いろんなことがリンクして、素直に自分の感情が入っても独りよがりにはならないんじゃないかと思いました。
むしろ、僕が息子と対峙して出てくる感情って、聴いている方たちに近いんじゃないか。逆に多くの人に届くのではないかなと思って想いを乗せた部分はあります。

横山 僕もうたのおにいさんのときと明らかに違うのは、「親御さんたちの言葉を自分が経験して発する」という感覚です。今回改めて、いただいたお手紙を読んだり、子供のいる友人たちに親の気持ちについて聞いたりしたのですが、やはり経験した人にしかわからないこともたくさんあって。僕はまだ子育ての経験がないので、要はどれだけその気持ちを感じられるかという、今までとはまったく違うアプローチで挑戦した部分はあります。
子供のために歌を歌い続けるというスタンスは自分の核の部分なので今後も変わりませんが、これからはさまざまな視点で「子供に関わる人たち」の歌を歌っていきたいと思っています。

☆これは「縦につながる」曲。すべての世代に届けたい

どんな人たちにこの曲を聴いてもらいたいですか?

水野 それはもう、いろんな人に(笑)。

横山 ですよね!一人でも多くの方に映画を観て、曲を聴いてもらいたいです。年代によって楽しみ方や捉え方が全然違うと思うので。子供たちには思わず口ずさめるような楽しい思い出の曲になってもらいたいし、大人には家族や子供のことをさらに大事に思えるような曲になってくれたら嬉しいです。

水野 僕の場合、ありがちですが子供が生まれると自分の親のことを思うんですよ。自分もこんな風に思われていたんだろうなとか、バンド活動を反対されていたのはこういう想いがあったからなのかなとか(笑)。きっと親御さんたちは子供と一緒に映画を観ていろんなことを感じると思うんですけど、曲を聴いて子供のことだけではなく、さらに上の親御さんのことを想ったりとか、「縦につながれる曲」として広がってくれたらいいなと思っています。





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