コブクロ、サラリーマン時代の苦悩を曲に!

コブクロ、サラリーマン時代の苦悩を曲に!




――ニューシングル「心」は自分の心と真正面から向き合わせる、コブクロにしか書けない説得力のある歌です。
映画『ちょっと今から仕事やめてくる』(5月27日公開)の主題歌としても、ブラック企業に翻弄されながら自分と向き合う主人公の気持ちとリンクしますね。


小渕健太郎 僕は以前サラリーマンをしていたんですが、今思えば、なかなか経験しないようなことがたくさんありました。
それもあってこの映画の主題歌のお話を受けましたし、
自分にしか書けないかもしれない、という気持ちがあったんです。
僕の働いていた会社は、朝の掃除からやってましたし、
しかもうちの営業所はなぜか、朝みんなで本気の野球をしてから仕事を始めるという(笑)。


黒田俊介 なんで仕事前に野球すんの!? ただでさえ朝早いんだからゆっくり寝たらいいのに!
おまえの働いてたとこ、阪神タイガースじゃないよな?(笑)。


小渕健太郎 (笑)。しかも、支店長が野球で負けたらめっちゃイライラするから、
なんの気分転換にもならず(笑)。
でも、当時はSNSもなく、メールもままならない時代ですから、
他の会社がどうしているのかなんて全然知らなかったし
自分のいるところの規律が当たり前だった。
もちろん今でも、会社や学校という組織が自分の全世界だと感じることってあると思うんですよね。
そこでダメなら自分はもうダメなんだって、自己否定に入ってしまう。
そういう、この映画が伝えようとしていることと、僕が味わった4年間、
自分自身をズタズタにしてダメにしてしまいそうだった瞬間をひとつにした結果、
この「心」のテーマが浮かんだんです。

――黒田さんはいかがですか?

黒田俊介 僕は社会人経験がゼロなんです。
だから小渕に会ったときに、毎日しんどそうだなって思っていましたね。
20、21歳くらいの頃、朝までストリートライブをしていたんですけど、
小渕はほとんど憂さ晴らしなんですよ。
俺は、数いるストリートミュージシャンの中で“俺が一番歌が上手いな!
”と思いながらやっているけど、小渕はただストレスを吐き出して、
しゃにむに現実逃避してる、そんな感じでした。
お客さんが誰もいないのに朝まで歌っているから、
「おまえ何に向かって歌ってんの! 明日は仕事?」って聞くと、
「うん、6時に起きないと」って。もう5時ですけど!っていう(笑)。


小渕健太郎 吐き出さないと、バランスがとれなくなっていました。
好きで始めた仕事だとしても、そこには人知れず辛さもあって、もう辞めそう!
みたいなのって、どんな仕事にもあると思うんですよね。
そんななかでも、ストリートでお客さんが「桜」のCDを買ってくれたときは、
本当に嬉しかったなぁ。
僕は営業だったんですけど、会社では前月の売上成績は翌月になると
リセットされちゃうじゃないですか。
でも、この「桜」を買っていただいた分は、月が替わってもゼロにはならない。
半永久的にみんなの心に残るんだって。
まぁ、「桜」の次に作った社会風刺的な曲は、全然売れなかったんですけどね(笑)。
活動休止を経て「うまくガス抜きができるような状態を作れている」

――そういった経験を経て、「心」が出来上がったんですね。


小渕健太郎 そうですね。
あとは、心が弱くなって引きこもってしまったり、人と会いたくなくなったり…。
SNSの時代だからこそ、自分自身の存在意義みたいなもの、
誰も周りにいなくなっても自分の“ 心”という大親友がいることを思い出してほしいんです。
絶対に離れられない親友だからこそ、扱い方を無下にしないでほしい。
自分の心はどんなことしたって切り捨てられない、
どこにもいかない親友なんだって、この曲が気づくきっかけになったら嬉しいですね。

――たとえば会社を辞めたとしても、そこですべてが終わりなわけではないですもんね。
ちなみに、コブクロは2011年に一度休止していますが、それにも通じる部分はあったんでしょうか。
続けていたことを止めたり休むことって、すごく難しいことだと思うんです。
それでも休止した結果、もっとも得たものは?


小渕健太郎 休む前の自分は、これをやるしかない、
こうあるべきだとすべてを決めつけて進んでいました。
一番分厚い壁が破れていない状態を破ったのが、まさに休んだときなんですよね。
壁もなくなり、ただの黒田俊介と小渕健太郎になった。
そして、もう一度集まったからコブクロが始まり、
お互いリハビリのように歌ったり曲を作ったりしている中で、
“どんな自分たちでもいいんだ”という、コブクロになれたんです。
そうさせてくれたのは、お客さんでした。
5万人くらいの人がフリーライブに来てくれたのを目の当たりにして、
そこからコブクロの在り方が変われたんですよね。
そんな経験を経て、今は日々の中に休みも取り入れて、
うまくガス抜きができるような状態をふたりとも作れているんだと思います。
一気に大噴射するくらいなら、常に少しずつ抜いておかないとっていう。


黒田俊介 当時の俺たちは、ちょっと足を止めるなんて、
そんな生ぬるい感じじゃなかったもんな。
それくらいまでやったからこそ、“これ以上行ったらいけない”という線がわかったというか。
僕らみたいな仕事をしていて、イマジネーションがなくなったら、やってる意味がない。
遊び心を持って楽しみながらできる、ちょっとした心のゆとりも必要だというのが、
今はよくわかってるんですよね。



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